システム構築費を左右する7つのポイント

2018/02/26

どのようなシステムであっても、依頼者が事前に明確にしておくべきポイントがあります。これを正確に伝えることで、後に請求金額が変わる危険を回避できます。ここでは影響が大きいにも関わらず、業者から質問が出ない限り気づかない「費用を左右するポイント」について説明します。

1. システムの理想目標と、最低限クリアしなければならない目標について

システムの理想目標を明示することはもちろん、最低限クリアしなければならない目標も併せて設定する必要があります。「予算とスケジュール」と折り合いを付けるために、必要だからです。現実的な目標をどこにおくのかは、システム開発会社と共に定義することになります。

2. 社内のシステム管理者、担当者のスキルやポジション

システム開発を外部に発注する場合、システム会社の窓口になる社内の担当者が必要になります。業務に精通し、社内的な権限がある方が進めやすいため、マネジメント職が適しています。
ただ多忙な場合が多いため、別の担当者をおくこともあります。いずれの場合も、担当者とシステム会社とが情報交換を行ううえで、そのスキルやポジションは重要なポイントです。具体的には以下の点を明示する必要があります。

1. 社内で担当者や兼任者がいる、あるいはそれに準ずる支援者があるかどうか
2. スキルや経験
3. 権限と業務知識

3. 誰がそのシステムを使うのか

システム完成後、それを実際に使用する人は誰で、その使用頻度はどれくらいかを明確にする必要があります。コンピュータシステムに詳しいか否か、インターネット系のシステムに慣れているかどうかなどによって、設計時点から対応させる必要が出てくるからです。この部分を明確にしないと、後で設計変更が出る可能性があり、スケジュールの遅れにつながります。

4. アクセスの範囲

これは、第3者(取引先、代理店、会員など)からのアクセスがあるかどうかです。
システムの利用者をどこまで広げるかで条件が変わってきます。まず利用者に応じて適切なセキュリティのレベルを検討する必要があります。
また相手先毎に、アクセスできる情報の範囲や加工の仕方を検討する必要も出てきます。さらにレポート類は必要かどうか。また上記に比べると微細ですが、外部アクセス用の画面デザインも費用に影響します。

5. 他のシステムとの連携があるか。ある場合はその内容

まず社内システムとの連携についてです。経理との連携、在庫・商品など基幹データベースとの連携が考えられます。連携がある場合は、必要とされる条件について関係部門から情報を集めておく必要があります。

次に社外のシステムと連携がある場合です。取引先のシステムの場合、力関係によって取引先のやり方に合さないといけないときと、自社のシステムに相手が合わせてくれる場合とがあります。

前者のケースでは、こちら側の設計は完全に相手方依存となり、コントロールできる余地が多くはありません。従って相手側の条件が分からないと、設計・開発費用の見積りができませんので、事前に情報を可能な限り集める必要があるのです。

6. 既存システムをリニューアルする場合、既存システム仕様を全て伝えることができるか

よくありがちな依頼の仕方に、基本要件については、既存システム(現物とドキュメント)を参考にして欲しいというものがあります。既存システムを作った会社とリニューアルする会社が別の場合、ほぼ間違いなく問題が発生します。

既存システムの仕様書が存在する場合には問題も解決しやすいのですが、多くの場合、仕様書は無いか、あっても不十分です。システムは「業務」があってこそなので、既存システムが「何故そのように作られているのか?」という理由を知ることなく理解することは不可能です。

このことから、システム開発担当者に、背景を含めて詳細に伝えることができるかどうかがポイントになります。(逆に機能のひとつひとつを「業務」とマッチングさせる作業が可能であれば、必ずしも既存システムの「仕様」を明確にする必要はありません)

7. 参考にしたいWebサイトがある場合、ビジネス要件を全て伝えることができるか

前項でも触れましたが、これと同じ理屈で、システム開発担当者に対して
「このサイトを参考にして欲しいので、あとはよろしく」
という伝え方では、ほぼ間違いなく問題が発生します。

戦略は往々にして目に見えないため、表面上の機能を参考にするだけでは、本来の意図を踏み外すことがおおいにあるからです。

また参考にしたいWebサイトがある場合、是非それをシステム開発会社へお伝えください。依頼者の考えを知るための参考情報となるからです。その際に、なぜそのサイトに着目したのか理由を明確に伝えることが大切です。

この記事を書いた人について

谷尾 薫
谷尾 薫
オーシャン・アンド・パートナーズ株式会社 代表取締役
協同組合シー・ソフトウェア(全省庁統一資格Aランク)代表理事

富士通、日本オラクル、フューチャーアーキテクト、独立系ベンチャーを経てオーシャン・アンド・パートナーズ株式会社を設立。2010年中小企業基盤整備機構「創業・ベンチャーフォーラム」にてチャレンジ事例100に選出。