あまり語られることのないリモートワークの本当のメリット

2020/03/06


最近リモートワークが脚光を浴びていますので、そのことについて書いてみます。

当社は2007年の創業以来、一貫してリモートワークの業務スタイルで行ってまいりました。
オフィスに通わない、お客様先にも常駐しないスタイルで、エンタープライズのシステム開発を行う会社は全国でも稀だと自負しています。

なお創業当時のリモートワークの事情を振り返ると、セカンドプラン的なワークスタイルとして世の中に認識されていたように感じます。主流はあくまでもオフィスワークにあったのです。またオフィスに通うという行為自体が価値観の根底にありました。

しかし近年ではリモートワークのサスティナブル(持続的)な側面が評価され始めています。被災による交通機関のマヒや、感染症の流行への耐性が強く、業務遂行における可用性が高いからです。

ちなみに当社では、代表を始めとして、委託契約スタッフでも、正社員でも、全員テレワーク勤務で統一しています。正社員として入ってくるメンバーは、転職する前は毎日会社に通っていたのに、当社に来ると初日から在宅勤務になります。今までのワークスタイルが変わるわけですから当然戸惑いもあります。ですが実際にやってみると初めて気づくようなことがあるようです。

先日スタッフの一人がこんなコラムをアップしましたのでご紹介します。

その中でとても興味深いことを言っていて私自身も驚きました。
テレワークを始める前は「チーム作業でコミュニケーションに支障がないか」を一番気にしていたが、
実際やってみると「コミュニケーション力が上がった!」と実感しているようなのです。

これは私にとって嬉しいことでした。もう既にリモートワークに慣れ親しんでいる立場からすれば、そのような効果を強みとして認識することはありませんでしたが、新たに始める人にとっては客観的にメリットが見えてくるようです。

確かにコミュニケーションについては、オフィスで肩を並べて仕事をしていれば、コミュニケーション技法や5W1Hを徹底的に意識する必要性は薄まるでしょう。困ったことが起こったらいつでも声を掛けれるという状況に依存してしまうからです。

しかしお互いの居場所が離れている場合には、1回1回のコミュニケーションの都度「相手に間違いなく伝える」「相手に間違いなく伝わったことの確認」という努力が必要になってきます。このことが日常的に織りなされるリモートワークの現場では、コミュニケーション力がいやおうなしに鍛えられるわけなのです。

あとテレワークを実際にやってみて見えてきたメリットについて書いてみます。これはあくまでも当社の視点でまとめたメリットですが、参考になればと思います。

家庭における様々な事情との両立

人生には、出産、育児、介護、引越しといった様々なライフイベントがあります。場合によってはいったん職場から離れることもあるでしょう。しかし育児にせよ介護にせよ、家族の面倒を伴う場合、フルタイムで就労できないため、職場に戻りたくても受け入れて貰えないことがあります。

ライフイベントが生じる前は、第一線の戦力として活躍していたとしてもです。職場が求める朝9時から夕方18時までの勤務を月曜日から金曜日まで全うするルール。これができないがために、能力を活かす場を失ってしまうのです。

私はこれを非常に勿体無いことと捉えて、創業当初から「時間や場所に制約されない自由な働き方」を軸に据えました。その結果、決して採用市場には出てこない(出たくても出てこれない)逸材ともいえるメンバーを得ることができました。
なかなか良い人材が採れないと嘆く人たちを横目に、当社ではとても優秀な方を仲間に迎えているのです。

生産性がグイグイ上がる

実はリモートワークを始めた当初「効率や生産性」についてはあまり意識してませんでした。やってみて後から実感したわけですが、まず通勤時間がありません。毎日オフィスに通うとなれば、自宅玄関から職場までの往復時間がかかります。当たり前といえば当たり前のことですが、この往復時間が無くなる、というメリットをヒタヒタと実感し始めたのはやってみてからでした。

仮に自宅玄関からオフィスまでの往復時間を2時間とします。その場合1ヶ月で40時間、1年で480時間ですから、日数に換算すると20日となります。営業日換算で1ヶ月分です。この1ヶ月が余白として手に入るわけです。
(厳密にいえばリモートワークといえども、お客様との打ち合わせに出掛けるシーンは週数回あるわけですから、それを通勤時間と数えるかどうかのさじ加減はありますが、オフィス通勤の方も事情は同じですから、差し引いてシンプルに考えます)

今やモノよりお金よりも時間が大事と言います。この1ヶ月は値千金と言えるでしょう。つまり業務に使える可処分時間が増えると考えると生産性の向上は数値で計算できます。

それと通勤は大なり小なり何らかのストレスを伴うものですから、気持ちの切換え、スイッチのオンオフといったようなリードタイムが必要になります。しかし通勤そのものが無くなってしまうと、リードタイム不要で、さらに時間の使い方に継ぎ目が無くなります。特に設計作業やプログラムといった仕事で、生産性に勢いを付けて一気に加速させるためには、継ぎ目が無いというのが大事なところで、仕事の結果にレバレッジが効いてきます。

これはITという分野で仕事をするにあたってはかなり大きいと言えるでしょう。

それともう一つ、他所では殆ど語られることのないメリットがあります。
それは昼寝ができる、です。

昼寝が生産性に寄与する効果は随所で語られています。

ちなみに紹介記事のように企業制度として導入されつつありますが、まだまだ浸透は道半ばです。
オフィスの場合は、周りが働いている中で自分ができるかどうか意識の問題もあります。

パワー・ナップは、「power up(パワー・アップ)」と昼寝やうたたねを意味する「nap(ナップ)」をつなげた造語で、同教授が1998年に出版した著書『パワー・スリープ』で提唱したものです。深い眠りに落ちない10分から30分程度の昼寝を、午後の早い時間に取ることで、疲労回復や集中力・認知力向上の効果が得られるとされています。

このパワー・ナップの効果は、日本の厚生労働省も認めています。2014年3月に公表された『健康づくりのための睡眠指針2014』では、「午後の早い時刻に30分以内の短い昼寝をすることが、眠気による作業能率の改善に効果的」と指摘しており、昼寝はいわば公(おおやけ)のお墨付きを得ているのです。

こうした効果が認められて、欧米ではグーグル、ナイキなどの有名企業が就業時間中にパワー・ナップを導入しています。また、極めて高い集中力が求められるNASAでも、1日のスケジュールの中に昼寝の時間を組み込んでいるそうです。

カリフォルニア州マウンテンビューのグーグル本社は、昼寝用の睡眠マシン(EnergyPod)を導入しています。また、オレゴン州ポートランドにあるナイキ本社では、社員が睡眠をとったり、瞑想したりすることができる防音部屋が用意されています。

こちらの記事から引用しました

さて、もう昼寝をしない理由は見当たりません。オフィスの場合は、同僚の目が気にならないような環境や、組織の意識付けが必要ですが、リモートワークであれば誰に気兼ねすることなく、しかもフルフラットで横になれる昼寝環境があります。

実際、当社でも昼寝は推奨しており、私も度々この恩恵に預かっています。私の場合はお昼過ぎに思考力が落ちるパターンがあるのですが、15分でも目を瞑ると、みるみる脳が復活してくるのを五感を通じて実感します。高速道路の入り口で渋滞していたのが、料金所の通過とともに解消され、一気にアクセルを踏み込める感覚です。

脳と身体をリブート(再起動)して、一気に軽くする習慣を味方につけることで、当社では周りの予測を超える生産能力を発揮しています。

ご覧くださっている方に少しでも参考になれば幸いです。

この記事を書いた人について

谷尾 薫
谷尾 薫
オーシャン・アンド・パートナーズ株式会社 代表取締役
協同組合シー・ソフトウェア(全省庁統一資格Aランク)代表理事

富士通、日本オラクル、フューチャーアーキテクト、独立系ベンチャーを経てオーシャン・アンド・パートナーズ株式会社を設立。2010年中小企業基盤整備機構「創業・ベンチャーフォーラム」にてチャレンジ事例100に選出。