ゼロトラストなどIT用語をマネジメント向けに1分で概説してみる

2020/09/28

自分たちの会社のIT化を検討し始めている経営者もしくは事業責任者の方向けに、IT業界界隈で良く使われている言葉について、できる限り分かりやすく解説してみようと思います。

ビジネスユーザの立場でおさえておいたほうが良い言葉、知っておくと専門家と会話しやすい、という観点で言葉をピックアップしています。
今回はゼロトラストをはじめ、システム構造や構成要素に関する用語を1分で概説します!

レガシー

新しい技術の普及により陳腐化した技術で構築されたシステムのことを指します。
特にメインフレーム(汎用コンピュータ)やオフコンを利用して構築したシステムを指すことが多いようです。
これらは各ベンダの独自仕様で構築されており、システム修正・保守の制約やコストが高まるリスクがあるため、新しい技術への置き換えを示唆する文脈で用いられます。

【ひとこと】

意訳すると「過去の遺産」。負の遺産や時代にそぐわないという意味で使われます。
なお変化が激しい時代において陳腐化は経営リスクともいえるでしょう。

 

サイロ化

各部門が独自に業務を遂行し、それぞれ孤立している状態を指し、データがさまざまな部署に分散しているため、貴重なデータを活用できない問題を示唆する言葉です。
サイロ化する理由としては、企業内の各部門が個別最適でシステムを構築し、他部門のシステムとの連携が考慮されずに開発されてしまうことなどが挙げられます。

【ひとこと】

データが各部門や各担当者のパソコンの中に点在する状態よりも、一箇所に集めたほうが、経営的には望ましい状態です。

 

アーキテクチャー

「建築様式」や「構造」を意味する語。IT分野では「設計思想」「設計構造」などと意訳されます。
システムの機能や性能の全体像、システム外の環境との関係、利用者との関係、システムを構成する各要素のそれぞれの役割と関係性のバランスを考慮したシステム設計の土台になるものです。

【ひとこと】

システム開発においては土台や骨組の構造設計を指します。最小のコストで最大の効果を得るには構造が重要です。

 

マイクロサービス

小さく分割されたサービスを緩やかにつないで一つのシステムとして動かす設計構造のこと。
この対極である一枚岩のシステムの場合、家に例えれば壁紙だけ変えたいときに壁や柱ごと変えないといけないようなもので、画面上の一個を変えるだけでもコストが高くなります。マイクロサービスで構成されたシステムでは、サービス同士の依存関係が薄く、各々の構成が分離されているため、変更箇所の影響を小さく抑えることができます。本設計構造を使いこなしている企業としてAmazonやクックパッドなどが有名です。

【ひとこと】

分離のアプローチとして業務単位で切っていくほかシステムの内部構成の切り口もあります。

 

API

異なるシステムやサービスどおしをつなげる接点のこと。
コンセントをつなぐと電気が流れるように、システムの接点どおしをつなぐと情報の受け渡しができるというもの。つなぐ側とつながれる側の共通の約束事を満たすことで、プログラムから他のプログラムの機能を利用できるようになります。社内の共通機能を小さなサービスとして作っておいて、他のサービスから共通利用するほか、他社が提供するサービスを自社のサービスに組み込むのも可能です。総開発量や保守コストは下がるが設計コストとのトレードオフで検討すべきもののひとつです。

【ひとこと】

APIで繋がる場合はオンライン連携によりリアルタイムな処理が可能になります。
そうでない場合ファイルの受け渡しという形のオフライン連携か人手の作業です。

 

オンプレミス

自社内の設備によってシステムを運用することを指しmす。昨今ではクラウドなど外部サーバーを使用することが一般化しているため、それらと区別するため自社運用をオンプレミスと呼ぶようになりました。
金融分野や防衛産業など、事業モデルによってはオンプレミスが好まれる場合もありますが、それでも昨今では脱オンプレミスの傾向が進んでいます。

【ひとこと】

「オンプレ」と略される場合もある。略称で語るほうが業界通に見られやすい。

 

クラウド

インターネットなどのネットワーク経由で利用できるさまざまなサービスの総称で、アウトソーシングが進化した概念とも言えるもの。利用者増加への臨機応変さや事業環境変化への柔軟性を備え持つほか、災害対策やセキュリティの確保が安価にでき、金融や行政分野での活用も広まっていることから、クラウド上でのシステム構築が一般化しつつある。「必要なときに必要な分だけ使える」ため、水道の蛇口になぞらえて大きくひねれば大量の水を汲め、不要なときは閉じておける、という使い方ができる。

【ひとこと】

機能やセキュリティ面だけではなく、経理/財務面のメリットも大きい。

 

仮想化

コンピュータの物理的な構成にとらわれずに分割や統合を行うこと。
実際には1つしかないものを2つ以上に見せかけたり、2つ以上つのものを1つに見せかけたりする技術。複数の小さなコンピュータを1つの大きなコンピュータとして使ったり、大きなコンピュータを小さく分割して複数の利用者、用途向けに提供することができます。
容易にビジネスの変化に対応できるだけでなく、サーバーの管理コストを抑制することができます。

【ひとこと】

コンピュータの物理構成と論理構成を分離するため、アプリケーション側には影響なくダイナミックに物理構成を変更できるなど柔軟性も確保できます。

 

ゼロトラスト

「社内なら安全である」という前提で、内側を外側の脅威から守るセキュリティ対策では不十分と捉えて「すべてのトラフィックを信頼しないこと」を前提とするアプローチです。守るべき資産を「データ」と捉え、監視対象をネットワークからすべてのアプリと端末に変えるのが基本的な考え方となります。
約10年前に登場しGoogleやMicrosoftなどが採用してきたものとして知られています。
クラウドサービスの利用やテレワーク普及による「内と外の境界」の曖昧化、内部に侵入したウィルスによる攻撃、また内部情報漏洩の増加を背景として、セキュリティモデルの新しいパラダイムとして注目されています。

【ひとこと】

社外からの業務接続の手段としては仮想的な専用線接続が主流ですが、専用機器の処理能力を大量に使うため、テレワークの拡大につれて課題視されています。しかしゼロトラストの考え方では課題そのもの存在が解消する可能性もあります。

 

この記事を書いた人について

谷尾 薫
谷尾 薫
オーシャン・アンド・パートナーズ株式会社 代表取締役
協同組合シー・ソフトウェア(全省庁統一資格Aランク)代表理事

富士通、日本オラクル、フューチャーアーキテクト、独立系ベンチャーを経てオーシャン・アンド・パートナーズ株式会社を設立。2010年中小企業基盤整備機構「創業・ベンチャーフォーラム」にてチャレンジ事例100に選出。