基幹システム再構築とは何か?:価値を生み出す仕組みの再設計

2024/11/18

1. 基幹システムとは何か

基幹システムとは、企業活動を支える中核的な情報基盤です。販売、顧客管理、売上管理、在庫管理、会計、人事といった業務領域においてデータを一元管理し、業務プロセスを円滑に進める役割を担っています。ただし、その具体的な構成は企業ごとに異なり、すべての業務を統合しているケースばかりではありません。

多くの企業では、特に販売、顧客管理、売上管理といった領域に重点が置かれています。これらは企業の収益に直結するため、基幹システムの中心的な役割として位置づけられることが一般的です。一方で、物流や人事といった領域は基幹システムに含まれない場合もあり、状況に応じて外部システムやサブシステムとの連携が求められることもあります。

基幹システムは単なる業務効率化のためのツールではなく、企業が持続的な成長を実現するための「価値を生み出す仕組み」として捉えることが重要です。本章では、こうした基幹システムの役割と意義を理解することを第一歩として位置づけています。

2. 基幹システム再構築が必要となる背景

なぜ基幹システムの再構築が必要になるのか。その理由は多岐にわたりますが、以下のケースが多く見られます。

  1. 技術的な老朽化
    稼働年数が10年以上となり、サポート終了や不具合が頻発する。

  2. 事業環境の変化
    新規事業への対応や、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が急務。

  3. 競争環境の激化
    俊敏性や柔軟性が求められる中、従来の仕組みでは対応が難しい。

これらの背景を踏まえたとき、単なる「現状維持」ではなく、「将来の成長を支える仕組み」への刷新が求められるのです。

3. 基幹システム再構築のアプローチと選択肢

基幹システム再構築には、多様なアプローチがあります。選択肢を比較し、自社に最適な方法を選ぶことが成功のカギです。

  • オンプレミス vs. クラウド
    オンプレミスの安定性と管理の自由度、クラウドの柔軟性と初期コストの抑制、それぞれのメリットを理解することが重要です。

  • パッケージ vs. スクラッチ開発
    パッケージは短期間で導入できる一方、独自要件には対応しづらい場合があります。一方、スクラッチ開発は柔軟性が高い反面、開発期間やコストが増大するリスクがあります。

これらの選択肢を検討する際には、「自社の事業戦略に最も適した仕組みは何か」を常に問い続ける姿勢が必要です。

4. 単なる作り直しではなく、新しい価値を生み出すこと

基幹システム再構築の目的は、単なる「作り直し」ではありません。企業が未来の競争環境で生き抜くため、新たな価値を生み出す仕組みを設計することにあります。

たとえば、限界費用ゼロの特性を活かし、事業規模の拡大や新規顧客の開拓を目指すことができます。また、データの活用を最大化することで、迅速かつ的確な意思決定を可能にする仕組みを構築することも、価値創出の一例です。

5. 基幹システム再構築を成功に導くためのポイント

基幹システム再構築は、技術的な課題だけでなく、組織全体の意識改革も伴います。以下のポイントを押さえることで、成功への道が開けます。

  • 経営層の関与とオーナーシップ
    再構築は経営課題であり、現場任せでは成功しません。経営層が主体的に関与し、方向性を示すことが不可欠です。経営層の関与についてはこちらのコラム「「オーナーシップ」という曖昧さが混乱を生む:経営者が果たすべき本当の役割とは?」で詳しく解説しています。

  • 目標設定と現場との連携
    現場の実務に即した目標を設定し、現場の意見を反映することで、実効性の高いシステムを構築できます。

  • ベンダとの協業とリスク管理
    ベンダに任せきりにせず、適切な緊張感を保ちながら協業する姿勢が重要です。

  • RFP(提案依頼書)の作成
    成功の第一歩は、適切なRFPを作成することです。予算、目的、要件を明確化することで、プロジェクトの成功率が大きく向上します。RFPについてはこちらのコラムで詳しく解説しています。

6. まとめ: 基幹システム再構築がもたらす未来

基幹システム再構築は、企業にとって大きな変革の機会です。それは単なるコストや業務効率化の問題ではなく、新しい価値を創造し、競争力を高める挑戦です。

「基幹システム再構築を通じて、企業が持つポテンシャルを最大限に引き出す」――この視点を持つことで、プロジェクトは確実に未来へのステップとなるでしょう。

この記事を書いた人について

谷尾 薫
谷尾 薫
オーシャン・アンド・パートナーズ株式会社 代表取締役
協同組合シー・ソフトウェア(全省庁統一資格Aランク)代表理事

富士通、日本オラクル、フューチャーアーキテクト、独立系ベンチャーを経てオーシャン・アンド・パートナーズ株式会社を設立。2010年中小企業基盤整備機構「創業・ベンチャーフォーラム」にてチャレンジ事例100に選出。