RFPの作り方・作成方法を徹底解説!プロが教える成功のポイント

2023/10/03

はじめに

RFP(Request for Proposal:提案依頼書)は、プロジェクトの成功を左右する重要なドキュメントです。しかし、適切なRFPを作成するには、どのような点に注意すべきでしょうか?

本コラムでは「RFPの作り方」という観点から、RFPの基本的な構成や作成時のポイントを詳しく解説します。初めてRFPを作成する方でも、プロジェクトに最適な提案書を導き出すためのノウハウを提供します。

RFPとは?基本を押さえよう

RFPは、発注者がベンダーやパートナーに対してプロジェクトの要件や条件を提示し、提案を求める文書です。適切なRFPを作成することで、発注者のニーズを明確に伝え、質の高い提案を受け取ることができます。

RFPの目的:
プロジェクトの要件を明確化し、適切なベンダーを選定する。

RFPの重要性:
不十分なRFPは、プロジェクトの遅延やコスト増を招くリスクがある。

適切なRFPの効果:
発注者の意図を的確に伝えることで、無駄な手戻りを減らし、プロジェクトのスムーズな進行を実現できる。

また、RFPは単なる提案依頼の手段ではなく、プロジェクトの成功を左右する戦略的な要素でもあります。発注者の期待を明確にし、それに対するベンダーの理解度を高めることで、実際の開発・運用フェーズにおける課題を最小限に抑えることができます。

RFPと要件定義の違い

RFPと要件定義はしばしば混同されますが、目的と内容の深さが異なります。

RFPは調達を目的とする:
RFPはシステムの開発・導入を行うベンダーを選定するための文書であり、要件定義ほど詳細な技術的仕様は求められません。その代わり、業務の課題や期待する成果を明確にし、ベンダーに最適な提案を促すことが主な目的です。

要件定義は設計の基礎となる:
要件定義は、システム開発の初期フェーズで具体的な機能や技術仕様を確定するプロセスです。

範囲の網羅性は同等:
RFPは要件定義ほどの技術的な詳細を求めませんが、対象範囲の網羅性は要件定義と同様に求められます。RFPが不完全だと、ベンダーが提案しにくくなり、結果として適切なソリューションが得られなくなる可能性があります。

そのため、RFP作成時には「幅広い範囲を網羅しつつ、その目的に照らし合わせて詳細な技術仕様に踏み込みすぎない」ことが重要になります。幅は同じ(重要です)、掘り下げる深さが異なると捉えてください。

RFPの基本的な構成

RFPは、以下のような構成で作成されることが一般的です。

プロジェクト概要:
プロジェクトの目的や背景を簡潔に説明します。なぜこのプロジェクトが必要なのか、どのような課題を解決しようとしているのかを明確にすることで、ベンダーが適切な提案を行うための理解を深めます。また、関係者の役割や期待する成果についても記載し、プロジェクトの方向性を明示します。

システムに求めること:
システムに求める具体的な機能や仕様を明確にします。例えば、「顧客管理機能」「決済機能」「レポート出力機能」など、実装したい機能を具体的にリストアップすることで、ベンダーが適切な開発計画を立てやすくなります。また、現行システムとの連携の必要性や、将来的な拡張性の要件も記載すると、より良い提案を受けられる可能性が高まります。

スケジュール:
納期や中間マイルストーンを明示します。具体的な期限を提示することで、ベンダーが現実的な開発計画を立案しやすくなります。また、納期が厳しい場合には、優先度の高い機能から順次リリースするなどの方法も検討すると良いでしょう。

予算範囲:
プロジェクトの予算の目安や上限を提示します。予算を明示しないと、ベンダーが適切な提案を行えず、見積もりの大きなブレが発生する可能性があります。開発費、運用・保守費用、ライセンス費用など、コストの内訳を明確にすることで、現実的な見積もりを得られるようにしましょう。また、予算に制約がある場合は、その範囲内でどの機能を優先するかも記載すると、より良い提案を引き出せます。

評価基準:
提案書の評価方法を明確化します。一例として以下のような評価軸が考えられます。

  • 技術力:提案内容が技術的に妥当か、実現可能性があるか。

  • コスト:予算内で適正な見積もりか。

  • 納期:スケジュールに無理がないか。

  • サポート体制:導入後のサポートが十分に提供されるか。


提出方法:
提出期限やフォーマットを指定します。また、質疑応答の受付期間や、提案書のプレゼンテーションの予定がある場合には、その詳細も記載します。

リスク管理:
想定されるリスクやその対策を明記します。プロジェクトには、さまざまなリスクが伴います。例えば、

  • 技術的リスク:導入する技術が想定通り機能しない可能性

  • スケジュールリスク:納期が遅延するリスク

  • コストリスク:予算を超過する可能性

  • 運用リスク:導入後の運用がスムーズに進まない可能性


これらのリスクに対して、どのような対策を講じるのかを事前に明記することで、トラブル時の対応がスムーズになります。また、リスク発生時の責任の所在を明確にしておくことも重要です。

RFP作成のポイント

明確な定義:
あいまいな表現を避け、具体的な要件を記載することが重要です。例えば、「使いやすいシステム」と記載するのではなく、「1クリックで顧客情報を検索できるUI」といった具体的な仕様を記述することで、ベンダーが誤解せずに開発できます。また、機能ごとに優先度を設定し、必須要件とオプション要件を区別することも効果的です。

ベンダー視点での記載:
RFPを作成する際は、発注者視点だけでなく、ベンダー視点を考慮することが重要です。専門用語の過剰な使用や社内特有の表現は避け、一般的な業界用語を用いることで、ベンダーが正しく理解しやすくなります。また、システムの導入背景や目的を詳しく説明し、プロジェクトの全体像を伝えることで、ベンダーは適切な技術的提案を行うことが可能になります。

評価基準の透明性:
公平な選定を行うため、評価基準を事前に明確化することが重要です。例えば、「価格70%、技術力20%、サポート体制10%」のように、どの要素を重視するのか明記することで、ベンダーが適切な提案を行いやすくなります。また、評価方法(書類審査、プレゼン、実績確認など)についても具体的に記載し、選定プロセスを透明化することが望ましいです。

予算感の明示:
プロジェクトにどの程度の費用を投じるのかを明確にすることで、適切な提案を受けやすくなります。予算の上限・下限を示すことで、ベンダーは現実的な範囲で提案を作成できます。また、開発費、保守運用費、追加機能の費用といった内訳を示すことで、ベンダーと発注者間の費用感のズレを減らし、スムーズな交渉を可能にします。

柔軟性の確保:

過度に詳細な要件を記載すると、ベンダーの創造性を制限する可能性があります。たとえば、「データ分析機能を提供する」といった要件ではなく、「リアルタイム分析機能が必要だが、具体的な手法は提案を求める」と記載することで、ベンダーが最新技術を活用しやすくなります。適度な自由度を持たせることで、より良い提案を受けることができます。

【予算感を明確にする理由】
予算を示さないRFPでは、ベンダーが適切な提案を行うことが難しくなります。規模やリソースの投入量が不透明なままだと、提案内容に大きなズレが生じる可能性があります。

例えば、発注者が「できるだけ安く開発したい」と考えているのに対し、ベンダーは「高機能な提案をしたほうが採用されやすい」と判断し、結果として双方の認識にズレが生じるケースが多々あります。さらに、仮に提案を受け入れたとしても、「こんなに高いの?」という反応を引き出しやすく、無駄な時間を費やす結果になりかねません。

適切な予算感を事前に設定し、それをRFPに盛り込むことで、よりスムーズな交渉と効果的なベンダー選定が可能になります。具体的には、以下のポイントを考慮することが重要です。

  • 市場相場を参考にする
    過去の類似プロジェクトのコストを調査し、現実的な予算を設定する。

    内訳を提示する
    開発費、ライセンス費、運用費などの内訳を示し、コストの透明性を確保する。

    柔軟な予算枠を設定する
    「最低限必要な費用」「理想的な予算」の2段階で予算を設定することで、交渉の幅を広げる。
    予算が明確でないと、ベンダー側はリスクを見越して高めの見積もりを提示する傾向があるため、適切な予算範囲を示すことが重要です。適正な価格で適切なサービスを受けるためにも、予算感の明示は不可欠です。

よくある失敗例と対策

要件が曖昧:
ベンダーが誤解するリスクがあるため、具体的な例や図表を活用して、より明確に要件を定義することが重要です。例えば、「ユーザー管理機能を実装」とだけ記載するのではなく、「管理者がユーザーの追加・削除・権限変更を行える機能」と具体的に記載することで、意図のズレを防ぐことができます。また、期待する操作フローや使用シナリオを説明することで、ベンダーが提案を作成しやすくなります。

スケジュールが非現実的:
ベンダーとの事前相談を経て、現実的な納期を設定することが必要です。例えば、「3カ月以内にシステムをフル稼働」といった厳しい納期を設定すると、品質の低下や追加コストの発生につながる可能性があります。実際の開発プロセスでは、要件定義・設計・開発・テスト・導入といったフェーズを経るため、それぞれの期間を考慮したスケジュールを組むことが不可欠です。

評価基準が不明確:
選定プロセスに不信感が生まれないよう、評価基準を事前に共有することが重要です。例えば、価格、技術力、サポート体制、納期遵守度といった要素を数値化し、どの程度重視するのかを明確にすることで、公平な選定が可能になります。具体的には、「価格50%、技術力30%、運用サポート20%」のように基準を明示し、選定プロセスの透明性を確保しましょう。

予算を示さない:
適正な提案が得られず、無駄な調整作業が発生する可能性があります。予算の範囲が示されていないと、ベンダーはリスクを考慮して高めの見積もりを提示する傾向があります。また、発注者側が予算感を持たないまま提案を受け取ると、「思ったよりも高額」という認識のズレが生じ、交渉のやり直しが発生しやすくなります。市場相場を事前に調査し、予算の上限・下限を明示することで、効率的な提案プロセスを実現できます。

リスク対策を怠る:
想定されるリスクとその対応策を事前に示すことで、プロジェクトの安定性を高めることができます。例えば、「サーバー障害時の復旧対応」「データ移行のトラブル」など、発生しうる問題とその対応策を事前に検討しておくことで、トラブル時の混乱を防ぐことが可能です。また、リスク管理計画をベンダーと共有し、事前に合意を取ることで、責任の所在を明確にできます。

まとめ

RFPは、プロジェクトの成功に向けた第一歩です。適切なRFPを作成することで、発注者とベンダーの双方が納得できる提案が実現します。
以下のポイントを押さえることで、より効果的なRFPを作成できます。

  • 目的を明確にする
    プロジェクトの背景や課題を整理し、RFPの目的を明示

  • 必要な情報を整理してRFPに記載する
    期待する機能、業務フロー、導入後の運用体制などを詳細に記述

  • ベンダー選定基準を決める
    価格、技術力、サポート体制など、選定の指標を数値化し、客観的な判断基準を確立。

  • 具体的かつ柔軟な表現を使う
    要件を具体的に示しつつ、技術的なアプローチには一定の自由度を持たせる。

  • 予算感を明示し、適正な提案を引き出す
    市場調査を行い、現実的な予算範囲を提示。

  • 発行後の対応も怠らない
    ベンダーからの質問対応を行い、RFPの不明点をクリアにすることで、より良い提案を引き出す。


RFPの作成は一度きりの作業ではなく、発注者とベンダー双方が協力しながらブラッシュアップするプロセスでもあります。
本コラムの内容を参考に、実効性のあるRFPを作成し、成功するプロジェクトへと導きましょう。

「RFP作成コンサルティング」について

当社、オーシャン・アンド・パートナーズ株式会社では、単に要件を整理するだけでなく、企業の目的や課題を深く理解し、実現可能な計画を共に設計することを使命としています。経験豊富なコンサルタントが、お客様と伴走しながら現場の声や経営視点を反映した戦略的なRFP作成をサポートします。RFPの質を高め、最適なパートナー選定とプロジェクト成功を目指すために、ぜひ私たちのコンサルティングサービスをご活用ください。

この記事を書いた人について

谷尾 薫
谷尾 薫
オーシャン・アンド・パートナーズ株式会社 代表取締役
協同組合シー・ソフトウェア(全省庁統一資格Aランク)代表理事

富士通、日本オラクル、フューチャーアーキテクト、独立系ベンチャーを経てオーシャン・アンド・パートナーズ株式会社を設立。2010年中小企業基盤整備機構「創業・ベンチャーフォーラム」にてチャレンジ事例100に選出。