「コスト削減ではなく未来を創れ!」孫正義氏になりきって語ってみる

2025/03/14

ビジネスにおけるIT投資がもたらす生産性向上

ビジネスにおけるIT投資というテーマは、しばしば「コスト削減」の文脈で語られます。
確かに、業務の効率化や人件費の圧縮は企業にとって重要な要素です。
しかし、それだけでは IT投資の本当の価値を見落としてしまうのではないでしょうか?

私は先日のコラム「そのIT投資は1年で回収できるか?」:1年回収を実現する6つの視点において、1年で回収を実現する6つの視点から、IT投資がもたらす生産性向上について考察しました。

しかし、ふと考えました。

もしこれを孫正義氏のスケール感と発想で語ったらどうなるか?
孫氏といえば、「10倍、100倍、いや1,000倍の成長」を見据えたビジョナリーな思考で知られています。彼の視点でIT投資を語れば、「コスト削減」などという小さな話ではなく、「ITの力で企業の未来を圧倒的に変革する」という、大胆な視点になるはずです。

そこで今回、前回のコラムを 孫正義氏の思考法を借りて、書き直してみました。

孫正義氏のスケール感と発想で語ったらどうなるか?

以下、孫正義さん成り切りのスピーチ案を考えてみました。

『皆さん、考えてみてください。
IT投資の力とは何か?
それは単なるコスト削減の話ではない。
未来を変えるレバレッジなんです。

例えば、ある管理部門500人 、営業部門300人の企業が、たった 1日2時間の業務をITの力で削減できたとします。
年間38万時間の余剰時間が生まれる。
これは200人の新規採用を人件費ゼロで獲得したのと同じことです。

もし、これを16億円のIT投資で実現できたらどうでしょう?
人を雇えば年間16億円以上の人件費 がかかる。
しかし、IT投資なら1年で回収できる。
しかも、2年目以降はゼロコストで生産性が向上し続ける 。

しかし、これはほんの序章です。

次に営業の話をしましょう。
営業スタッフ300人1日2時間、余剰時間を営業活動に振り向けられるとします。
年間 14万時間の追加営業リソースが生まれる。
もし彼らが 2時間で1件のアポイントを取るとすれば?
年間7万件の商談機会です。

その10%が成約につながるとしたら?
7千件の追加成約
1件あたりの平均受注単価100万円なら、年間70億円の売上増です。

つまり、16億円のIT投資が1年で回収できるどころか、4倍の価値を生み出す
これは「コスト削減」ではなく、企業の未来を劇的に変える成長戦略です。

これを考えると、もう居ても立ってもいられない 。
この可能性を知ってしまったら、もう見過ごすことなんてできない。
私はこのことを広めるのが自分の使命だと思っています。
なぜなら、ITを正しく活用できるかどうかで、企業の未来が劇的に変わるからです。

「IT投資で何が変わるのか?」 そんな質問はナンセンスです。
変わるんじゃない。圧倒的に変えるんです。

そして、これをやるかやらないかで、5年後、10年後の会社の姿はまったく違うものになる。
こんなチャンスが目の前にあるんですよ。
私はこのことを考えると ワクワクして夜も眠れなくなる
未来が、今まさに形作られている。
さあ、あなたならどっちを選びますか?』

経済的生産性とIT投資の相関関係について

書き直しながら私自身もワクワクしてきました。
規模感も発想も、日本の企業がこれから真剣に考えるべき次元へと引き上がりましたね。

さて2025年2月1日付けの日経新聞に興味深いデータが掲載されていました。

このデータは日銀短観に基づいており、GDPとIT投資額の関係を示しています。GDPを企業の「売上」と捉えると、2017年頃から企業のIT投資額は売上の1%程度で推移し、2023年には1.2%を超えたことがわかります。

また、統計によると、日本企業のIT投資額の平均は売上の約1%とされており、このデータとも一致しています。さらに、近年はその割合が上昇傾向にあることが確認できます。

しかし世界的に見ると、日本のソフトウェア資産の規模は、米国・英国・フランスの半分以下にとどまっています。

またこのグラフからは、ソフトウェアの導入率が高いほど労働生産性も向上する傾向があり、企業の競争力を高めるにはIT投資が欠かせないことがわかります。

これは、先ほどの「なりきり孫正義氏」のスピーチで述べられた内容を裏付けるデータとも言えます。

日本は投資を見送ることで、作業の効率化だけでなく、革新的な商品やサービスの開発も遅れ、生産性の停滞を招いてきました。
しかし、それだけにIT投資による大きな成長の余地やレバレッジ効果が期待できます。

その可能性を知れば知るほど、「これからの伸びしろを考えるとワクワクして夜も眠れなくなる!」のではないでしょうか。

この記事を書いた人について

谷尾 薫
谷尾 薫
オーシャン・アンド・パートナーズ株式会社 代表取締役
協同組合シー・ソフトウェア(全省庁統一資格Aランク)代表理事

富士通、日本オラクル、フューチャーアーキテクト、独立系ベンチャーを経てオーシャン・アンド・パートナーズ株式会社を設立。2010年中小企業基盤整備機構「創業・ベンチャーフォーラム」にてチャレンジ事例100に選出。