
ご依頼の背景
S社はNPO(非営利組織)や社会貢献プロジェクト向けに、オンライン募金システムの提供および資金調達基盤の整備支援を行っている企業。主力サービスであるオンライン募金システムは、クレジットカード、コンビニ決済、ペイジーなど複数の決済手段に対応し、寄付、イベント申込、会費支払いなど幅広い用途に活用されている。
この仕組みは、単なるシステムとして誕生したものではなく、NPO活動の現場における資金調達の課題を解決するために生まれたものであり、社会的意義の高い取り組みとして現在も多くの団体に利用されている。
ダイヤル型募金の限界と、新たな資金調達手段の必要性
代表者は、かつて非営利団体の運営に携わっていた。
当時、その団体の年間活動資金は数千万円規模であり、その半分近くが、公共広告と連動した電話型募金によって支えられていた。しかし、この仕組みには大きな問題があった。電話型募金は匿名であるため、支援者との継続的な関係を築くことが難しく、さらに制度自体が数年以内に廃止されることが決まっていた。
つまり、年間数千万円規模の資金を確保し続ける新しい仕組みを作ることが、団体にとって避けて通れない課題となっていた。
オンライン募金の試行と仕組みの誕生
この課題を解決するため、オンライン募金の可能性を探る取り組みが開始された。その活動には、志に共感した技術者が参加し、オンライン募金の仕組みを無償で開発することとなった。こうして最初のオンライン募金システムが完成した。
この仕組みを導入した結果、オンライン募金額は順調に増加し、年間予算のおよそ10%にあたる約2,000万円が、この仕組みを通じて集まるまでになった。
しかし、この仕組みを他団体へ広げていくには、専任の運用体制と普及活動が不可欠であった。そのため、オンライン募金の普及を担う企業が設立されることとなった。
大規模災害が突きつけた現実
その後、大規模災害の発生を契機として、オンライン募金への需要は急激に高まった。従来の仕組みでは対応しきれない規模の利用が見込まれるようになり、より高機能かつ拡張性の高い新システムの開発が急務となった。
新しいシステムには、次のような条件が求められていた。
・複数決済手段への対応
・低コストでの導入
・クラウド型での提供
・募金者に不安を与えない画面設計
・イベントや会費など幅広い用途への対応
・継続寄付への対応
・募金者データ管理機能
つまり、単なる決済機能ではなく、活動全体を支える基盤が求められていた。
納期9月末、そして限られた予算
このプロジェクトには、大きな制約があった。
一つは、納期が9月末と決まっていたことである。これは、10月に開始されるイベントの受付と決済に、このシステムを使用することがすでに決まっていたためであった。
もう一つは、予算が極めて限られていたことである。
利用者が非営利団体であることから、大きな初期投資は困難であり、短期間で開発費を回収できる見込みもなかった。つまり、通常の開発方式では成立しない条件だったのである。
■「作れるか」ではなく「成立するか」
複数の開発会社と関係があったものの、この条件を満たせる相手は見つからなかった。
そんな中、ある紹介をきっかけに相談が始まった。
その際、
・予算の制約
・事業としての不確実性
・社会的意義
すべてを正直に共有した。そのとき返ってきた言葉は、
「システムは作ることができます。作った仕組みで、どうすれば資金が回るかを一緒に考えましょう。」というものであった。この言葉が、単なる開発ではなく、事業として成立させる取り組みの出発点となった。
■レベニューシェアという選択
最大の課題は資金であった。そこで提案されたのが、レベニューシェア方式である。
これは、システムから得られる収益をあらかじめ定めた割合で分配するという方式であった。
この方式により、
・初期費用を抑えられる
・長期的な事業継続が可能になる
・双方がリスクを共有できる
という形で、プロジェクトは現実的に成立することとなった。
限られた条件の中での実現
開発は極めて厳しい条件のもとで進められた。当初、納期を守るためには複数名の体制が必要とされていたが、予算の都合から、開発チームを極限まで絞り込んだ体制で進める判断がなされた。
開発チームは、要望に対して柔軟な発想で対応しながら、仕様の調整を重ねていった。そして最終的に、すべての要件を満たしたシステムを、納期内に完成させた。
お客様の評価:限られた条件の中で、新しい資金循環の仕組みを実現
限られた予算、厳しい納期、そして事業としての不確実性がある中で、「どうすれば実現できるか」を事業性まで含めて一緒に考えてもらえたことが、今回の取り組みを前に進める最大の要因でした。今回のプロジェクトは、単なる仕組みづくりではなく、社会的意義を持つ活動を支える基盤づくりでした。その意義を理解した上で伴走してもらえたことに、大きな信頼を感じています。
システムリリースその後
完成したシステムは、当初求めていたすべての条件を満たしていた。
・募金しやすい仕組み
・低コスト導入
・クラウド対応
・複数用途対応
・継続寄付機能
・データ管理機能
これらが一体となった、活動を支える基盤が完成した。
この仕組みは現在も多くの団体に利用されており、社会活動を支える重要な基盤として機能し続けている。


















